借地権問題

実例!借地条件変更において裁判所が考慮した事項を、判例をもとに解説します!その①

もしも、借地契約の残存期間が1年足らずになっていた時に、貸主の意に反して借地期間が延長される場合、借地人に対しての付随処分として「財産上の給付額」を増額することはできるのでしょうか。

これは借地条件が変更されるにあたって給付額が増額されるのかどうかが問題ですが、裁判所はこれをどのように考慮するべきなのか気になるところです。

それでは、上記のケースについて解説しましょう。

ケース1 給付額は増額される!

・契約締結日:昭和28年12月21日
・借地期間:昭和57年3月31日(昭和37年4月1日更新)
・目的:非堅固建物所有
・賃料:昭和54年4月以降、月額4万2380円

以上は借主のXと貸主のYとの間で交わされた本件土地の借地契約の条件です。

契約締結当時の本件土地の周辺は一部が中高層ビルが建っているだけで、あとは木造2階建ての店舗や事務所が立ち並んでいるだけでした。しかし、現在では繁華街の一画となり、商店や事務所、飲食店に利用される中高層ビルとなっています。

Xは本件土地とXが所有している隣接した土地上に木造2階建て居宅兼店舗を所有していましたが、昭和54年10月17日に火災で焼失したので、鉄骨鉄筋コンクリート5階建ての建築を計画しました。しかし、計画を実行するには非堅固建物から堅固建物所有に変更する必要性があったので、Yに対して本件土地の借地条件の目的変更を申し立てました。

当のYは将来的にYが所有する本件土地に隣接している土地の一部が買収される予定があったので、残った土地の面積で建物を建築するのはほぼ不可能に近いため、本件土地を全て、もしくは一部をXに返還してもらう必要性がありました。

したがって、借地期間満了まで1年足らずなのに借地契約の目的変更を行うのは妥当ではないとして争うことに……

裁判所の判断では、Xの主張を全面的に認めることによって解決しました。

この決定において重要なのは、借地条件変更の相当性と付随処分の2つです。

まず借地条件の変更の相当性についてですが、現在では周辺環境が繁華街の一画で商店や事務所、飲食店に利用される中高層ビルとなっていることから都市計画法上の規制や土地の利用状況などを検討すると、非堅固建物から堅固建物を建築するのは妥当だと言えます。

また、Yが本件土地以外にも土地を所有していること、仮に本件土地が全て返還されたとしてもY自身が住む意向がないこと、本件土地が借地されなければXが所有する隣接した土地が盲地になるので価値が大きく減少すること、Yが主張する用地買収計画は必ずしも具体性がないこと。

これらを踏まえた結果、Xの申し立ては相当だと判断されたのです。

さらに、付随処分としてXからYへ612万5000円を給付するに相当することも判明しました。それだけでなく、借地期間が変更されたことによって30年の期間が定められたことにより、新たに建築される建物の構造や規模、用途、そして裁判所における同じ種類の事案において給付額が更地価格の10%程度であることを踏まえると、給付する金額は更地価格の15%程度が相当だとしました。

したがって、Yに給付される金額は増額されて730万円となったのです。

ケース2 借地期間満了までの残存期間が3年だった場合、堅固建物所有目的への変更は認められる?

次は、 借地期間満了までの残存期間が3年だった場合、堅固建物所有目的への変更は認められるかどうかです。それでは、このケースについてご説明しましょう。

○特定の事情がない場合、変更は認められない

まず、借主のXは先代が昭和25年9月頃に建築した物件に住んでおり、当のXも昭和45年7月に平成2年6月30日へ本件借地契約を更新しました。

そして貸主のYは昭和56年4月22日に相続によって本件土地を取得しました。この時、YはXに対して立退料として第一審で1億円を提示しており、本件借地契約の借地期間が満了を迎えた時は更新しないと決めています。

Xはその後、相続によって本件建物と本件土地の借地権を取得しましたが、本件建物が非常に老朽化していることから鉄筋コンクリート5階建てを建築するために本件借地契約を堅固建物所有の目的に変更しようと申し立てに及びました。

第一審は借地条件変更を認めたため、Yは借地期間を更新しない正当な理由があるとして申し立ての棄却を求めました。

裁判所の判断によると、今回の申し立てはXの申し立ての棄却が決定したことで幕を下ろしました。

今回のケースでは、Yが以前から更新しないという移行を示しており、Xが堅固建物所有の目的に変更しなければならない特別な事情がないと判断したため、申し立てが棄却することになりました。

Y自身も唯一の不動産を所持していることや相当額の立退料を提示していることなど、将来的な更新が見込めるわけでもなければ今すぐに堅固建物所有の目的に変更しなければならない特別な事情もないというのが最大のポイントです。

まとめ

今回の場合の争点は、誰がどれだけ土地を所有していたか、目的変更を行う正当な理由があるかどうかです。他の土地を持っているなら一つの土地にこだわる正当な理由が必要ですし、目的変更に伴う正当な理由がなければ契約内容を変更する必要性はありません。

裁判所が考慮するべきなのは、契約満了までの残存期間を踏まえた借地条件変更に伴う正当な理由があるかどうかではないでしょうか。

Top