相続人多数

相続した不動産の売却:相続人が複数の場合

相続人が複数人いる不動産

相続人が複数人いるとき、相続した不動産を売却して現金にすることは簡単にできません。
というのも最初に遺産分割協議で、誰が相続人なのかを明確にした後に遺産をどう分割するのかを話し合わなければいけません。
その結果を受けて相続財産である貯金や不動産が分けられます。

不動産について一人だけのものとすることができれば、所有移転登記を行い名義を書き換えることで不動産売却が出来ます。
しかし、複数の相続人が平等に不動産を相続するときには、共有名義となりそれぞれが所有権を持つことになります。
そうなると、不動産売却をしようとしても相続人全員の同意が必要です。

正確に言えば、各々が自分が権利を持つ分だけを不動産売却することは可能です。
でも、共有名義となっている不動産の一部分の権利だけを買い取ろうという人はまずいません。
中には訳ありの物件を買取業者がいるので、そういうところに売ってしまうということもできますが、身内の中にいきなり赤の他人を引き入れてしまうと後々まで引きずるトラブルになる可能性があります。

では円滑に不動産売却をするためには、どうすればいいのかというお金に余裕があるならば、他の権利者に代金を支払ってその所有権を買うのです。
逆に他の権利者のほうがお金を持っているならば買い取ってもらうという方法もあります。
もちろん、権利者にその気がないと話が進みませんし、買い取るにしても買い取ってもらうにしても資金が必要になりますから、いつでも使える方法ではありません。

お金がないというときには、共有名義のままで売却をして得られた収益を所有権の持分割合で分けます。
権利者全員の合意が必要ですが、税金を納めるために現金が必要だ、といった理由で説得をしていくことで実現できる可能性はあります。

贈与税に関して

お金のやり取りをせず、すべて母親や長男など一人の名義にしてしまうという方法もあります。
ただこのときに権利を売るのではなく贈与したという形になり、贈与税を支払わなければいけません。

贈与税は年間で基礎控除額110万円以上の財産を受け取るときに課税されます。
不動産は数百万円、数千万円という値で取引されますから、基礎控除額の範囲に収まることはまずありません。
贈与税は最高税率で55%ですから、その負担はかなり重いといえます。

しかも、名義をまとめて不動産売却をすればその売却益に対しても譲渡所得税が課税されます。
家族のために善意で名義を書き換えてしまうと、重い税負担に悩むことになるので慎重に行動したほうがいいでしょう。

土地を区切るとは

あとは、土地を権利の持分割合に応じて分けてしまう方法があります。
所有権を分け合っているという曖昧な状況ではなく、こちらからあちらまでは誰の土地、と明確に区切れば不動産売却をするとしても他の権利者がいないので邪魔は入りません。

そこで注意点としては、持分割合に応じて分けるといっても、境界線をどのように引くのかで納得できなければもめます。
不動産は道路に接しているかどうか、日当たりを考えた方角などで大きく価値が変わってきます。
完全に同じ条件とはいかなくても、価値の不平等が起きないように条件をできるだけ揃えなければいけません。

土地を分けて境界線を引くことを「分筆」といいますが、そのためには土地家屋調査士が現地で測量をして測量図を作成する事が必要です。
さらに、「分筆」で分けた土地を誰が所有するのかということを明確にするために、分筆登記申請及び所有権移転登記をして共有名義から個別の名義に書き換える必要があります。
どの方法にしてもすべての相続人が意見を一つにするためにも、十分な話し合いが必要です。
相続税の支払いを考えると時間はないかもしれませんが、出来る限りの話し合いをしましょう。

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