法律は変化していますから仕方がないことですが、今のルールを理解し、現法に則して増改築を行わなくてはなりません。
ここでは、斜線制限などにより判明する既存不適格建築物についてご説明いたします!
建物には高さに関する制限が存在
建築物は、建築するにあたり高さに関する規制があります。
1、絶対高さの制限
2、斜線制限(道路斜線制限と隣地斜線制限)
3、日影規制
これらの制限に則していない建物は「既存不適格建造物」ということになってしまうのです。
そもそも高さ制限というのは、各時代により様々な事が思慮され決められていきますが、多くの場合、自然環境や人々の生活を守る事を目的にして定められており、これまでも度々改訂が加われてきました。
わが家に増改築工事を施すべく建築士に依頼した際、建てた当時は当時の法律に則して建てていたけど、今の法律においては高さ制限に引っ掛かり、初めてマイホームが既存不適格の対象になっている事実を知るケースが多々あります。
しかし、この条件下でも現法に合わせてリフォームしなくてはなりませんので、こういった法令についても知る必要があるわけです。
では、具体的にこの3つの高さ制限ってどんな制限なの?
絶対高さの制限とは
「絶対高さの制限」とは、生活環境を良くするため、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域にのみ適用されていて、この2つの地域において、建物の高さが10m以下または12m以下になるように制限されています。
しかし、木造住宅なら3階建て相当、コンクリート造なら4階建て相当になるので、一般住宅ではほとんどクリアできると思われます。比較的シンプルなルールと言えますね。
斜線制限とは
次に、「斜線制限」。これは、「道路との境界線」と、「お隣りの土地との境界線」からの距離に応じて建築物の高さを制限することにより、各建物の日照や通風に支障をきたさないようにしたり、道路の採光の確保することを目的としています。
「斜線制限」の中には、2つの制限があります。
1つ目は「道路斜線制限」
これは、道路の日照や採光、通風に支障をきたさないように、また周辺に圧迫感を与えないように、建築物の高さを規制したルールのことです。
前面道路の反対側の境界線から、一定の勾配で記された線(=道路斜線)の範囲内に建築物を建てなくてはならないという内容で、道路斜線は「用途地域」や「容積率」「道路の幅」などで「適用距離」と「適用角度」が変わり、建物の高さと位置が決まるということです。
2つ目は「隣地斜線制限」
これは、隣人の日照や採光、通風等、良好な環境を保つため建築物の高さを規制したルールとなっています。
隣地境界線上に一定の高さをとり、そこから一定の勾配で記された線(=隣地斜線)の範囲内で建築物を建てなければなりません。
ただ、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域では、絶対高さの制限が設けられているため、隣地斜線制限は適用されないことになっています。
日影規制
最後に「日影規制」です。
これは、周囲の日照を確保して、心地よい暮らしを守る目的で設定されています。
1年の中で最も日の短い12月22日(冬至)の日当たりを基準としていて、冬至の日照時間はAM8時~PM4時まで(北海道のみPM3時まで)の間、一定時間以上影が生じないようにしなくてはなりません。
一定時間以上…これは「用途地域」や「建物の高さ」によって決まります。
「用途地域」とは、例えば、第一種低層住居専用地域とか準工業地域…等々ですね。
下の表を見ながら考えてみましょう。
まず、「用途地域」は先程の説明の通りですね。
「制限を受ける建築物」とは、この日陰制限を受けることになる形状の建物のことです。
第一種第二種低層住居専用地域なら「軒の高さ7mを超える建物、または地階を除く階数が3階建ての建物」。一つポイントとしては、軒の高さとは屋根の付け根のところのことです。屋根のてっぺんではありませんよ!そして、それ以外の用途地域については「建築物の高さ10mを超える建物」となります。
「平均地盤面」からの高さとは、つまり地面からの高さです。この地点での日陰料を計測することになります。
最後に「日影時間」。境界線からの距離に応じて基準が変わります。
境界線から5~10mの範囲での日陰時間と、10m以上の範囲での日陰時間に規制が設けられているわけですね。
一見、日影規制は厳しそうにみえますね(;^_^A) でも、大丈夫です!
5m以内にある隣地の日照は考慮されません。また、先に述べた通り、制限を受ける建築物は、軒の高さが7mを超える建築物や地階を除く階数が3階立て以上の建築物のため、一般的な2階建ての一戸建ては規制されません。
斜線制限、日陰規制…いろいろ制限がありましたね。建てた当時は大丈夫でも、増改築をする際に現法では既存不適格建造物に該当してしまうケースはよくあります。ぜひ制限の中でも最大限の設計で建てられるよう、プロにも相談したり、情報収集をしていきましょう!
以上、斜線制限など高さ制限により判明する既存不適格建築物についてご説明しました!