借地権問題

実例!借地条件変更(事情の変更)の申し立てをすると、承諾料はどうなるの?

借地に建っている建物を建て替えるには、貸主の許可が必要です。許可を得る際には、財産上の給付つまり承諾料を借主が貸主に支払うケースが多いです。

一般的な承諾料の相場は、裁判所の判例をもとに、更地価格の約10%ほどとされています。

しかし、個々の事情によっては相場よりも増減するケースがあります。この記事では、承諾料に関する実際に有った裁判の判例をもとに、どのように判断されたのかを解説します。

ケース1:公道への通行利益がある場合

借主と貸主たちの間では、以下のような借地契約がされていました。

・契約の目的:非堅固な建物の所有
・借地期間:平成3年12月12日まで
・地代:昭和56年1月以降年額6万5000円
・本件建物:木造瓦葺平屋建居宅

借主は本件建物に加えて、借地から公道につながる通路部分も、借地の対象であると主張しています。ただし、借地は通路部分には接していますが、公道と直接接してはいません。

また、借地があるエリアは以前より防火地域の指定を受けており、隣接する貸主の所有地にも最近、堅固建物が建築されていました。さらに借主は、新しく建築する建物について、建築主事により建築計画が建築関係の規定に沿っている旨の建築確認をしていました。

貸主は、通路部分については借地契約の対象ではないため、通路部分を路地状の敷地として申請して得た建築確認は、明らかに違法のため、通常の借地条件変更とは事情が異なると主張しました。

これに対し借主は、貸主は借地を建物所有目的で利用できる形で貸す義務があるため、通路部分についても借地権があると反論。通路部分を敷地として申請した建築確認は有効である、建築確認と借地条件変更の裁判は目的が異なるため建築確認の可否は借地条件変更の裁判の判断材料にはならない、という2点を主張しました。

ケース1の結論

裁判所は、建築確認については使用権限の有無など法律関係を審査するものではなく、正式な手順を踏んでいるため、有効だと判断しました。

さらに、借地条件変更と建築確認の関係については、それぞれ目的が異なるため、建築主事の確認と異なる判断をすることもできるが、新しい建築物がその借地にふさわしいかどうかの判断の一要素となると判断しました。

また、通路部分については、借主に通行権があり、また状況を考慮すると堅固建物への新築・改築は妥当だとしました。そのため、借地条件変更は容認されるという結論になりました。

そして、借地条件変更に伴い、借主に独占的な使用権はないものの通行権があるため、通路部分は借地面積には含めないが通行利益として算定。公平性を保つため、借地の更地価格に約12%を掛けた金額の支払いを借主に命じました。

ケース2:建物の用途を変更した場合

借主と貸主の間では、以下のような借地契約がされていました。

・契約締結日:昭和38年10月15日
・保証金:2000万円
・存続期間:契約締結後30年
・契約の更新:平成5年10月15日
・現存建物
種類:給油所
構造:鉄筋コンクリート造り一部鉄骨造陸屋根2階建
規模:高さ6m2階建て
用途:事業用(給油販売所)

借主は、既存の給油所は老朽化しており、全面改装しても黒字化は困難と判断。そのため、自転車販売店舗を建築し、第三者に貸すことで黒字化を図ろうとしました。

そのため、借主は「構造:鉄骨造陸屋根3階建、種類:店舗、床面積:合計1042.05㎡の建築物を建てることを計画し、借地条件変更を申し立てました。

貸主は、約5年後の平成35年10月15日に借地契約が終了予定なのに、条件変更をすると借地期間が大幅に伸びる点などをあげて、承諾料として借地の更地価格の約10%、さらに追加の保証金1500万円の支払いと地代の増額を求めました。

ケース2の結論

裁判所は借地契約の期間については、まだ相当の借地期間が残っており、貸主が近い将来その土地を使うなどの正当な理由がないため、借地条件の変更は容認されると判断しました。

承諾料については、一般的に借地の更地価格の10%相当額を基準に事情により増減するとされているが、あくまで関東における実情であり、本案件のような大阪府内での取引では当てはまらない場合もあると判断し、鑑定委員による鑑定意見書に委ねました。

鑑定委員会は、借地はもともと堅固建物の所有目的であり建物の用途や規模が変更されただけである点、新築予定の建物が更地を最大限有効に使うものではない点を考慮。更地価格の6%が適正な承諾料であるとしました。

さらに、現行地代は適切であり増額は不要。契約一時金により、解体費用なども担保されているため、保証金追加も不要と判断しました。

しかし、裁判所は将来の争いを避けるため、承諾料2500万円と地代の増額を命じました。

まとめ

2つのケースから、承諾料は相場から諸事情を考慮して増減されること、例え地代の増額が必要でない場合でも利益調整や将来の争いを予防する観点から増額を認める場合があることが分かります。

借地条件変更の際は、公平性を保つために柔軟な判断がされるので、何かお困りのことがある方は、ぜひ不動産取引に精通したプロにご相談下さいね!

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