借地権問題

実例!借地上の建物の条件を変更した場合、借地権はどうなる?判例を元に解説します!

借地契約を行う場合、地主側が不利益を受けないよう、「木造などの非堅固建物に限定する」「増改築禁止」といったように、借地上に建てる建物に条件を設ける場合がよくありますね。

もし、これらの条件以外の建物を建てる場合は、借主は貸主と相談して「条件の変更」をする必要があります。もし、無断で条件に当てはまらない建物を建てたると、最悪の場合契約解除となる可能性もあります。

では、借地上の建物の条件を変更した場合、契約解除になるかならないか、その線引きはどこにあるのでしょうか?

今回は、借地上の建物の条件を変更した場合、借地権はどうなるか!2つの判例をもとに、解説します!

ケース1概要:行政命令による堅固建物への改築

貸主は、所有していた公道を挟んで存在する2区画の土地について、Aから貯炭場として使用したいと申込を受けて、Aと借地契約を結びました。

借地契約の際に、Aから小さな建物を付属施設として建てたいとの申し出があり、「木造2階建て住宅及び店舗並びに貯炭場所有」を目的とする取引が成立。「危険又は衛生上有害若しくは近隣の妨害となるべき事業をしない」との特約も成立しました。

その後、新借主Bが旧借主Aから賃借権を引き継ぎ、石油販売などの場所として営業していました。しかし、消防署からの勧告を受け、借主Bは貸主の反対を押し切り、1区画に堅固な石油貯蔵庫を建築。貸主は、用途が条件に反しているとして、建物の撤去と土地の明け渡しを求めました。

これに対して、借主Bは以下の3点を主張しました。

(1)借主に不利な契約条件で結ばれた特約のため、旧借地法11条にもとづき無効である

(2)用途が条件に反しているのは1区画の土地上の建物のため、2区画全ての借地契約を解除することはできない

(3)やむなく石炭から石油の販売に切り替えたところ、消防署の命令により、コンクリート造りの石油貯蔵庫を建築する必要が発生したものである。そのため、貸主の不利益が少ないこともあり、信頼関係は維持できており、用途が条件に反しているという違法性は認められない

ケース1:裁判所による判断

裁判所は、借主Bの主張に対し、以下のように判断し、貸主の請求を認めました。

(1)については、本契約において用途を限定した特約は有効であると判断しました。

(2)に関しては、借地契約が2区画をまとめて結んだものであり、石油貯蔵庫を一方の土地に建築した目的は、2区画とも商売に利用するためのものなので、2区画とも借地契約を解除できるとしました。

(3)についても、建物の建築は、木造で小規模なものを認めていたにすぎず、本来の目的に反した用途に土地を使っていて、さらに貸主も明確に拒否していたため、相互信頼関係は崩れていると判断しています。

このケースのポイントは、借地契約で用途を制限する特約が有効であれば、特約に違反した場合は、契約解除の理由となること。特約に違反した理由が消防署からの命令であっても違反には変わらないことです。

ケース2概要:借地契約に反して堅固建物を建築

借地上にあった借主所有の建物が、よその火災が燃え移って焼失。借主の妻が貸主に、引き続き土地を貸して欲しいと申し出て、貸主は明確に拒否をせず、条件次第では承諾するといった態度で応じました。

そのため、借主は堅固建物の建築を開始。それに対して貸主は、特約で「借主の建物が滅失した時は、借地契約が解除になる」約定があるため借地契約は解除になった。また、「非堅固建物所有を目的」とした取り決めがあるため信頼関係が崩れたという2点を主張し、建物の撤収と土地の明け渡しを求めました

これに対して借主は、下記3点を主張し争いました。

(1)契約解除の約定は借主の不利になるため、旧借地法11条に反する

(2)遅滞なく異議が伝えられておらず、旧借地法7条により法定更新がされた(※)

(3)信頼関係は損なわれていない

(※) 建替等について貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合については、借地法第7条が明文で定めており、原則として、建物の滅失の日から、堅固建物については30年、その他の建物については20年間借地権が存続することになる。この場合の借地契約の内容は、従来の借地契約の内容と同一であると解されている。

ケース2:裁判所による判断

裁判所は、借主の主張に対し、以下のように判断しました。

(1)については、朽廃(=ボロボロで使えない状態)以外の理由で滅失した場合も借地権が消滅するという貸主の主張は、借主に不利だと判断され、旧借地法11条に基づき無効とされました。

(2)に関しては、借主の妻が引き続き土地を借りたい旨の申し出をした時には、明確な回答はしなかったものの、建築開始から約一ヶ月で異議を申し立てており、遅滞のない異議は伝えられているとし、法定更新されていないと判断しました。この点は貸主の主張を認めたと言えます。

(3)については、借主の旧家屋が類焼(他の家から出た火事が広がってきて焼けること)により焼失したこと、借主が建築に至る経緯、借地の周辺は防火地域のため堅固建物が多いなどの事情を踏まえ、契約を解除するほどには信頼関係が損なわれていないと判断しました。

つまり、貸主の遅滞のない異議は伝えられていることは認められたものの、契約解除には至らないという判決がなされたわけです。旧借地法7条による法定更新は滅失した建物が非堅固建物で、新築した建物が堅固建物である場合も適用される点、また、周辺の事情により借主が堅固建物を建設する「条件の変更」の妥当性が認められた点がポイントです。

まとめ

一見似たケースに思える2つの判例ですが、ケース1は用途を変更する理由が妥当でないと判断され、ケース2では妥当であると判断された点が大きな違いです。こういった判断は、上記のように事情を細かく見ていく必要があるため、一般の人には難しいといえます。

ケースにより判断が分かれるので明確な線引きは難しいと思いますが、もし、このような事例が発生した場合は、すぐに専門家に相談すると安心ですね!

以上、借地上の建物の条件を変更した場合、借地権はどうなるか!判例を元に解説しました!

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