借地権問題

実例!建物買取請求権が認められるかどうかの基準とは?判例をもとに解説します!

建物買取請求権とは、「土地を返さなければいけないけれど、更地にする費用がない」といった場合に、借主が貸主に、建物を買取るよう請求する権利です。

借地契約が終わる際、本来は土地をもとの状態つまり更地にして返す必要がありますが、まだ利用できる建物を撤去するのは、借主の損失になるのはもちろん、社会的な損失になるという考えで誕生した権利です。

しかし、建物買取請求権が認められるには、必要な要件を満たす必要があります。実際に過去にあった裁判所の3つの判例を解説します!

ケース1:無断譲受人が承諾を得ずに建物を増築・改装・修繕した場合

【概要】
貸主は借主に土地を貸し、借主は借地に建物を建てて所有していました。借主は無断譲受人に、貸主の承諾をとらずに、建物と土地賃借権を譲渡。さらに、この譲受人は、貸主の承諾を得ずに建物を増築しました。

貸主が無断譲受人に対して、建物撤去と土地の明け渡しを求めて訴訟を起こしました。一審では貸主の主張が全面的に認められました。控訴審では無断譲受人は貸主の請求そのものを争いつつ、建物買取請求権を使う意思を示しました。控訴審では、無断譲受人の建物買取請求権が認められ、貸主が上告しました。

【裁判所の結論】
控訴審の通り、無断譲受人の建物買取請求権を認める判決が出ました。

建物買取請求の対象は、借地借家法により、借地権を持つ者が土地に付属させた建物などのものと定められています。その理由としては、借地権譲渡をしない以上、貸主は譲渡当時の建物買取義務があるが、増改築による価格の上昇を負担させるのは合理的ではないということがあげられます。

本案件の場合は、現借主は無断譲受人であり、貸主の承諾を得ずに建物を増改築しています。ですが、特に貸主にとって不利益ではなく、さらに工事が建物の維持・保存に必要な範囲内であるため、例外的に認められると判断されました。

ケース2:無断譲受人が借主に無断で大改造した場合

【概要】
借主Aは貸主より土地を借りて、借主Bに転借(また貸し)をしました。借主Bは貸主から許可を得て、土地上に建物を所有。その後、借主Aが死亡し、相続によりその妻が借主と転借人の地位を引き継ぎました。

その後、建物は土地の転借権とともに借主Bから、無断譲受人へと譲渡されました。無断譲受人は、借主Aの妻の承諾を得ないまま、建物に入居し、朽廃(ボロボロで使用できない状態)に近い状態だった建物に対し、大改造の工事を始めました。

借主Aの妻は、異議を伝え、さらに裁判所から改築工事を続行禁止とする仮処分決定を得て、無断譲受人に伝えました。しかし、無断譲受人はこれを無視し、工事は完成しました。

無断譲受人は、借主Aの妻と貸主に、改造後の建物を時価相当額で買取ることを請求。さらに、それが認められなければ、譲受当時の価格で買取請求権を使うと主張しました。

控訴審で、裁判所は、改造工事は信頼を損ねる行為にあたり、買取請求権は信義則(相手に対して誠実に裏切らないようにするという原則)に反すると判断。これに対して、無断譲受人は、信義則の濫用だと反論しました。

【裁判所の結論】
無断譲受人の主張を退けました。

無断譲受人が行った建物の改造は、信頼を大きく損ねる行為であり、改造工事による建物の増加価格を放棄して、譲受当時の価格での買取を求めたとしても、買取請求権を使うことは、信義則に反するのでできないとしました。

これは買取請求権が、誠実な借主を守るために制定されものであり、信義則に反する場合は認められないという考えによるものです。

ケース3:所有者の異なる土地にまたがる建物の場合

【概要】
貸主Aは借主に土地を貸し、借主は建物を建てて所有していましたが、貸主の承諾を得ずに無断譲受人に建物と土地賃借権を譲渡しました。その後、無断譲受人は、貸主の許可を得ないまま建物を増築。建物は、無断譲受人が貸主Bから借りた土地に、一部またがって建てられました。

貸主Aが無断譲受人に対し、建物の撤去と土地明け渡しを請求して訴訟を起こしました。第一審では、無断譲受人が貸主Aの承諾を得たと主張するも、貸主Aの訴えを認める結論が出ました。

控訴審では無断譲受人が貸主Aの請求を争いつつ、予備的に建物買取請求権を行使する意思表示をしました。裁判所は貸主Aの承諾はないとしつつ、建物買取請求権を認めました。これに対し、貸主Aが控訴しました。

【裁判所の結論】
無断譲受人の買取請求権は認められないという結論になりました。

所有者の異なる土地にまたがって建てられた建物の建物買取請求権は、独立した所有権の対象である必要があり、建物の一部分だけという場合は、それぞれの部分が独立して利用できる区分所有権の対象になるものでなければ、買取請求の対象にはならず、たとえ一部を貸主Aのために放棄しても、結論は変わらないと判断されました。

まとめ

買取請求権は借主を保護するものではありますが、必ずしも認められるわけではありません。特に増改築を行う際は、要注意です。

裁判となると負担が大きいので、トラブル防止のために増改築を行う際は、専門家に相談しましょう。

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