借地上の建物が朽廃しても、借地借家法によって土地を借りているるため、定められた期間は借地権は消失しません。これなら借地上の建物が朽廃しても借地権が消滅することがなくなり、地主から契約解除を迫られる心配もありません。この部分は旧借地法でも変わりません。
しかし、借地上の建物が朽廃した時、新築禁止特約を契約しているにもかかわらず違反している建物が残っている場合、借地権の扱いはどうなるのでしょうか。借地上の建物が朽廃して新築禁止特約違反の建物が残ると借地権は消滅するのか、実際に過去にあった判例を元に解説します!
新築物件の借地権は消滅する?
旧借地法でも借地借家法でも、特別な事情がない限り当事者間で借地契約を目的とした契約を行うことで合意した場合、建物が朽廃したら借地権も一緒に消滅します。同様に特別な事情がない限り、新築禁止特約に違反している建物があった場合、旧借地法6条2項に該当しないので建物として認められません。
つまり、新築禁止特約に違反しているので建物扱いではないため、借地権そのものが存在しないということになります。ここで挙げられた新築禁止特約とは、借主が貸主の許可を得ずに借地上の土地に建物を新築しないことを約束したものです。
これに違反した新築の建物は特約に違反しているので建物扱いにはなりません。それでは、一例をご紹介しましょう。
旧借地法に基づく新築物件3軒の扱い
大正15年8月5日、貸主Aは借主Bに土地を貸し、借主Bはすぐに建物を建てました。その際、AはBに対して新築禁止特約を結び、新築物件を建てないように約束しました。
その後、相続を理由にAからCを経てXへ貸主の地位を移転し、BからYへ借主の地位を移転させました。この時の更新は昭和31年と51年に行われています。
Yは昭和44年5月頃に新築物件①、昭和47年5月頃に新築物件②を建てました。この時、新築禁止特約が継続されているにもかかわらず、当時の貸主であるCの了解は得ていません。
そしてCからXへ貸主の地位を移転し、Yは平成2年3月にXに対して旧建物の建て替えを申し入れましたが、Xはこれを拒否し、無断で使用されている土地の返還を要求しました。その後、4月11日建物の朽廃による借地権が消滅したのを理由に、建物の収去と共に土地の明け渡しを求めて訴訟を起こしました。
これに対し、あろうことかYは元の借主であるBが建てた旧建物を取り壊した上で6月6日頃に新築物件③を建てたのです。これにはYの言い分があるようで、旧建物の状態は以下の通りでした。
ここで最大の焦点となるのが、新築禁止特約に合意する前に立てられた旧建物を取り壊した場合、当該借地上に建てられた3軒の建物の借地権はどうなるのか、という問題です。
取り壊す時点で旧建物は既に朽廃していると言えますが、旧建物を取り壊しても借地上の仕様を継続しているため、借地権は消滅するのか、消滅するとしても3軒の建物の扱いはどうなるのかが問題となりました。
3軒の建物は建物としてみなされないため、借地権は消滅する
結論から言えば、3軒の新築物件はXに対して許可を得て建てたものではないので、最初の旧建物以外は新築禁止特約に違反しているということで借地権が消滅し、建物としてみなされないという判断が妥当だとされました。
最優先するべきなのは新築禁止特約の存在で、土地の貸主が所有権を握っている限りは特約が最優先事項として効力を発揮します。貸主に対して借主が借地契約を目的としたものだと主張できる特別な事情がない限り、新築物件が建っていたとしても借地権は消滅するのが原則です。
そして借地の使用継続による法定更新ですが、これも特別な理由がない限り新築禁止特約に違反して建てられた物件は旧借地法6条2項により、建物扱いではなくなります。つまり、新築物件①~③はXの許可を得ずに無断で建てられたものなので、Yが借地目的を主張したとしても特別な理由が一切ないため、当然認められません。
このことから、Yの借地に対する借地権は旧借地法によって更新されることがなく、旧建物の朽廃によって消滅したことになります。
まとめ
この訴訟の最大のポイントは、Yが貸主の許可を得ずに勝手に建物を3軒も建てたことです。建物を建てる前に貸主の許可を得ていればこんなことにはならなかったはずですが、新築禁止特約があることが分かっていると推移されるので、知っていて新築を建てたのであればタチが悪い話だと思われかねません。
きちんと新築禁止特約があるか確認するのがおすすめです。