長屋というと、時代劇に出てくる浪人が住んでいるような住宅を思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、今回お話する長屋は現代の建築基準法でいう「長屋」です。
簡単にいうと、一般的にいう、マンション、アパートが「共同住宅」で、タウンハウス、テラスハウスが「長屋」だとイメージしてください。(正しく知りたい方は建築基準法を読んで下さいね(‘◇’)ゞ)
今回は「長屋」の敷地条件に新たな規制が加わったことをお話します。
敷地条件の規制が緩かった長屋
「長屋」の敷地条件は建築基準法では共同住宅ほど厳しく規制されていなかったため、旗竿状の敷地や、奥深い敷地など、敷地条件の厳しい土地に建てられてきました。
しかし、「重層長屋」と言われる、1階に2、3階部分の住宅の玄関ドアを設けた住宅が「長屋」として建てられるようになると、実際には共同住宅と同様に多くの人が集まって住まうことになります。
そのため、火災時等の避難についての安全性を確保するための法整備が行われました。
平成30年3月の「建築基準法の一部を改正する法律案」で条例で長屋の立地条件を規制できるようになりました。
規制の内容は条例ですので、各自治体によって規制の内容は異なります。
ここでは「東京都安全条例」についてお話します。
東京都安全条例が改正されました
近年東京都では、危険性の高い重層長屋が建てられ問題視されていました。
出入り口の部分が一階に設置してあり、共有となる階段や廊下がなければ重層長屋とみなされます。
このような構造のものは火災などが発生した場合に非常に危険ですが、改善されることなく進められてきました。
住民同士でトラブルが起こることも多く、場合によっては裁判まで起こったケースもあります。
平成31年4月1日、東京都安全条例が改正されたことを受けて、長屋に関してこれまでよりもより厳しく規制されるようになりました。
東京都の「長屋」にかかる規制の内容
東京都安全条例が改正がされたことにより、これまでとは異なる点がいくつかあります。
まず、住戸の床面積300㎡を超える、又は住戸の数が10戸を超える場合です。
今までは敷地内の通路幅員は2m以上とされてきましたが、改正を受けて3m以上になっています。
また、長屋の規模等にかかわらず道路から主要な出入口までの距離が35mを超える場合、敷地内通路の幅員を4m以上とる必要があります。
さらに、災害時の避難手段の確保を図るため、主要な出入口以外の窓その他の避難上有効な開口部を、道路に避難上有効に通ずる幅員50cm以上の通路に面して設けなければなりません。
新しい中古物件でも「長屋」には注意して
東京都安全条例の改正によって、既存不適格となる建築物の範囲が広がっています。
中古の長屋を購入しようとした時、たとえ近年建設された新しい物件でも既存不適格になっている場合があります。
既存不適格の建築物は同等の規模の再建築ができないので注意が必要です。
今回は「長屋」の敷地条件に新たな規制が加わったことについてお話ししてきました。
ちょっと面倒くさい説明が長かったでしょうか?
既存不適格建築といえば、築古だと思い込んでいましたが、築年数が新しくても、「長屋」には気を付けた方がよさそうですね。
また、以前なら「長屋」ならば敷地いっぱいに建てられた、旗竿状の敷地や奥深い敷地の利用にも注意が必要です。
当たり前のことではありますが、法が改正されると、今まで合法だったものが「不適格」になってしまいます。
不動産の価値と利用する人の安全について考えさせられますね。